小野玄暉 『赤毛のアチョー』 感想&評価 【ジャンプ読み切り】
- 03/21/2015 12:21
『赤毛のアチョー』のネタバレ感想。少年ジャンプ16号に掲載された読み切り。作者は小野玄暉(おのげんき)。
基本的に週刊マンガのレビューはしませんが、今後は暇だったら掲載された読み切りマンガをレビューしようかと思ったり思わなかったり。もしレビューした人が大漫画センセーに成長したら、「オレ見る目あんじゃね?」的に自慢できそうだから(笑)
主人公は高校生の、周雄介(まわりゆうすけ)。中国の武術大会で何度も優勝する武術家。その雄介がひょんなことから、中国人少女・小喬(しょうきょう)と結婚してしまうという流れ。
一見するとギャグマンガっぽい設定ですが、全体的なテイストはややシリアスなアクションマンガ。
アクション描写はそれなりにまずまず。
ただ一番良かった点を挙げるとしたら、キャラクターの表情。
画像はヒロインの小喬(しょうきょう)ですが、キャラクターの感情がしっかり読み取れる。「口」の感じとか地味に難しいと思うんですが、しっかり描けてる印象。
ちなみに作者の小野玄暉の年齢はまだ20歳。もし作者が30歳40歳ぐらいだったら長年研鑽を積み上げたからと推察可能ですが、年齢的な若さを考慮するとセンスや天性のたまものの故。編集者が可能性や価値を見出したのもうなずける。
ただストーリーの展開がややタルい。
例えば序盤の1ページ目から3ページ目。主人公の雄介が弁当を開くと、結婚届だけが入ってる(1ページ目)。その後に小喬(しょうきょう)がやって来て、ちゃんとご飯が入った弁当を渡して「サインして」と笑顔。愕然とする雄介(2ページ目)。3ページ目で周りの生徒から囃し立てられ、小喬(しょうきょう)がニコっと再び笑顔の絵の直後から過去に遡る。
でも1ページ目の結婚届でオチ書いてるんだから、2ページ目3ページ目のクダリに必要性を感じない。同じ絵が3枚連続してる感じがしてクドい。
例えば最初の1ページ目で小喬が弁当のおかずをアーンして、グヌヌという表情を浮かべる雄介。周りが冷やかす。2ページ目で「じゃあ早く結婚するネ」と結婚届をバンと突きつける。そして過去編へ…という流れだとインパクトも強くて、3ページも必要ないのかなと。
トータルで47ページあるんですが、全体的に説明がまどろっこしい。ムダが多くてテンポが悪い。
少年ジャンプで読み切りマンガが掲載されるときは、だいたい作者の紹介ページも載る。
それをよーく見ると小喬(しょうきょう)が原稿から飛び出してる。
でもパッと見、全然分かりづらい。小喬(しょうきょう)の背丈の高さが、多分直立してる時とほぼ変わらない。だから机の位置をもう少しガンと下げるか、逆に太ももぐらいまで飛び出して、もっと前にのめった姿勢にすれば、良い意味で「違和感」を与えられると思った。
こういう些細なテクニックや配慮もまだまだ足りない印象。
そういえば作者の小野玄暉は『うしおととら』や『金色のガッシュベル!!』が好きなんだそう。でも全部サンデー作品。もっと気を使えと思ってしまった(笑)
あとそもそも論として、タイトルにカラー(色)を持ってくる神経。『青のエクソシスト』でも言及した気がしますが、マンガ雑誌はモノクロ。具体的なカラー名を言われてもピンと来ない。
設定としては呂布の赤兎馬が実は女の子で、その愛の力を授かるとめちゃめちゃ強くなれるということ。そこで主人公の雄介と小喬が結婚して付き合う流れにも繋がる。
その赤兎馬族の最後の末裔が、ヒロインの小喬(しょうきょう)。だから全く意味がないこともありませんが、ピンと来ないものはピンと来ない。
その小喬(しょうきょう)の髪の毛はトーンすら貼ってない。ただの白髪か金髪かにしか見えない。せめて冒頭あたりで赤毛が原因でイジメられてれば、印象としては少し残るんでしょうがそれもない。
例えば、タイトルが「燃えよアチョー」「炎のアチョー」だったら、いかにも中国が設定として絡んできてて、また赤色のニュアンスも自然と読者に伝わる。また「恋の炎」といった二人の関係性も意味合いも含まれる。「赤毛」だけだと、意味としての広がり…もっと言えばマンガとしての広がりが乏しい。
『赤毛のアチョー』の設定は悪くない。愛の力でパワーアップする設定はシンプルで王道。
ただ敢えて言うなら、「愛が伝わった」ことが視覚的に分かりづらい。急に主人公が都合良く強くなる展開は微妙か。例えば愛が発現したときにだけ小喬の髪の毛が赤色に変色するとか、またキスをしたら愛が伝わるとかだったら女子読者にもウケが良さそう。それだったら「キスをさせないための展開」を作ることも可能。
また作者・小野玄暉の画力も悪くないんですが、その反面としてストーリーの進め方や展開のさせ方が未熟。「何故そうなるのか?」という分からない展開が多い。どうして小喬が主人公の雄介を好きになったのか?など。赤兎馬族は色んな悪党に利用されてきたと言いつつ、珍は利用できてなかった。ここらへんの整合性のなさは気になる。
全体的にストーリーを組み立てるのが拙すぎて、設定を使いこなせてない。描きたい内容や目的・オチは分かるけど、粗さも目立つ。その割にムダも多いので、もっとコマ割りやストーリーで削れる力も必要。
ただいろいろ書きましたが、おそらく今年か来年には『赤毛のアチョー』は連載されるはず。冒頭でも言ったように、キャラクターに表情がある。ここだけでも十分価値はあるマンガ。また作者の年齢(20歳)も考えると、編集者としては色んな経験を積ませておきたいはず。でも長期連載かされるかは実力的には現段階ではやや厳しいか。
◯展開…★2.5◯テンポ…★3
◯キャラ…★3.5◯画力…★3.5
◯全巻大人買い…★?
◯おすすめ度…73点!!!!
基本的に週刊マンガのレビューはしませんが、今後は暇だったら掲載された読み切りマンガをレビューしようかと思ったり思わなかったり。もしレビューした人が大漫画センセーに成長したら、「オレ見る目あんじゃね?」的に自慢できそうだから(笑)
あらすじ
主人公は高校生の、周雄介(まわりゆうすけ)。中国の武術大会で何度も優勝する武術家。その雄介がひょんなことから、中国人少女・小喬(しょうきょう)と結婚してしまうという流れ。
一見するとギャグマンガっぽい設定ですが、全体的なテイストはややシリアスなアクションマンガ。
表情力がある
アクション描写はそれなりにまずまず。
ただ一番良かった点を挙げるとしたら、キャラクターの表情。

画像はヒロインの小喬(しょうきょう)ですが、キャラクターの感情がしっかり読み取れる。「口」の感じとか地味に難しいと思うんですが、しっかり描けてる印象。
ちなみに作者の小野玄暉の年齢はまだ20歳。もし作者が30歳40歳ぐらいだったら長年研鑽を積み上げたからと推察可能ですが、年齢的な若さを考慮するとセンスや天性のたまものの故。編集者が可能性や価値を見出したのもうなずける。
展開がタルい
ただストーリーの展開がややタルい。
例えば序盤の1ページ目から3ページ目。主人公の雄介が弁当を開くと、結婚届だけが入ってる(1ページ目)。その後に小喬(しょうきょう)がやって来て、ちゃんとご飯が入った弁当を渡して「サインして」と笑顔。愕然とする雄介(2ページ目)。3ページ目で周りの生徒から囃し立てられ、小喬(しょうきょう)がニコっと再び笑顔の絵の直後から過去に遡る。
でも1ページ目の結婚届でオチ書いてるんだから、2ページ目3ページ目のクダリに必要性を感じない。同じ絵が3枚連続してる感じがしてクドい。
例えば最初の1ページ目で小喬が弁当のおかずをアーンして、グヌヌという表情を浮かべる雄介。周りが冷やかす。2ページ目で「じゃあ早く結婚するネ」と結婚届をバンと突きつける。そして過去編へ…という流れだとインパクトも強くて、3ページも必要ないのかなと。
トータルで47ページあるんですが、全体的に説明がまどろっこしい。ムダが多くてテンポが悪い。
自己紹介
少年ジャンプで読み切りマンガが掲載されるときは、だいたい作者の紹介ページも載る。

それをよーく見ると小喬(しょうきょう)が原稿から飛び出してる。
でもパッと見、全然分かりづらい。小喬(しょうきょう)の背丈の高さが、多分直立してる時とほぼ変わらない。だから机の位置をもう少しガンと下げるか、逆に太ももぐらいまで飛び出して、もっと前にのめった姿勢にすれば、良い意味で「違和感」を与えられると思った。
こういう些細なテクニックや配慮もまだまだ足りない印象。
そういえば作者の小野玄暉は『うしおととら』や『金色のガッシュベル!!』が好きなんだそう。でも全部サンデー作品。もっと気を使えと思ってしまった(笑)
赤兎馬の末裔
あとそもそも論として、タイトルにカラー(色)を持ってくる神経。『青のエクソシスト』でも言及した気がしますが、マンガ雑誌はモノクロ。具体的なカラー名を言われてもピンと来ない。
設定としては呂布の赤兎馬が実は女の子で、その愛の力を授かるとめちゃめちゃ強くなれるということ。そこで主人公の雄介と小喬が結婚して付き合う流れにも繋がる。

その赤兎馬族の最後の末裔が、ヒロインの小喬(しょうきょう)。だから全く意味がないこともありませんが、ピンと来ないものはピンと来ない。

その小喬(しょうきょう)の髪の毛はトーンすら貼ってない。ただの白髪か金髪かにしか見えない。せめて冒頭あたりで赤毛が原因でイジメられてれば、印象としては少し残るんでしょうがそれもない。
例えば、タイトルが「燃えよアチョー」「炎のアチョー」だったら、いかにも中国が設定として絡んできてて、また赤色のニュアンスも自然と読者に伝わる。また「恋の炎」といった二人の関係性も意味合いも含まれる。「赤毛」だけだと、意味としての広がり…もっと言えばマンガとしての広がりが乏しい。
赤毛のアチョーの総合評価
『赤毛のアチョー』の設定は悪くない。愛の力でパワーアップする設定はシンプルで王道。
ただ敢えて言うなら、「愛が伝わった」ことが視覚的に分かりづらい。急に主人公が都合良く強くなる展開は微妙か。例えば愛が発現したときにだけ小喬の髪の毛が赤色に変色するとか、またキスをしたら愛が伝わるとかだったら女子読者にもウケが良さそう。それだったら「キスをさせないための展開」を作ることも可能。
また作者・小野玄暉の画力も悪くないんですが、その反面としてストーリーの進め方や展開のさせ方が未熟。「何故そうなるのか?」という分からない展開が多い。どうして小喬が主人公の雄介を好きになったのか?など。赤兎馬族は色んな悪党に利用されてきたと言いつつ、珍は利用できてなかった。ここらへんの整合性のなさは気になる。
全体的にストーリーを組み立てるのが拙すぎて、設定を使いこなせてない。描きたい内容や目的・オチは分かるけど、粗さも目立つ。その割にムダも多いので、もっとコマ割りやストーリーで削れる力も必要。
ただいろいろ書きましたが、おそらく今年か来年には『赤毛のアチョー』は連載されるはず。冒頭でも言ったように、キャラクターに表情がある。ここだけでも十分価値はあるマンガ。また作者の年齢(20歳)も考えると、編集者としては色んな経験を積ませておきたいはず。でも長期連載かされるかは実力的には現段階ではやや厳しいか。
◯展開…★2.5◯テンポ…★3
◯キャラ…★3.5◯画力…★3.5
◯全巻大人買い…★?
◯おすすめ度…73点!!!!