賭博破戒録カイジ 全13巻 感想| 最凶パチンコ「人喰い沼」がカイジを呑む!
- 07/29/2013 15:00
『賭博黙示録カイジ』の続編。
このシリーズでは、基本的に二つだけ。『チンコロ』と『パチンコ』勝負をします。前シリーズみたいに「命を奪い合う」ってところまではないので、そういうのが苦手な方もご安心を。
帝愛グループに借金返済のため拉致されるカイジ。どこぞの地下へ軟禁され、今後10年は過酷な地下労働という状態。そこで班を仕切ってる班長に、チンコロ勝負をふっかけられる。
それで勝利すると、一時的に地上の世界へ戻ることができる。しかし、地下の監禁から逃れるには大金が必要。そこで巨大パチンコで再び帝愛グループと勝負!って流れ。
ざっくりレビューしていきます。
地下チンコロ(1~5巻)
冒頭で軽くストーリーの流れは説明したので、チンコロそのものの説明を少し。
チンコロってのは、サイコロを転がしてその出た目で勝負を決めるという賭博。それを『親』役の人間を起点に、『子』役の人間が順々に振っていくという流れ。

今回のルールでは↓のような出目順になってる。要するに『ゾロ目』以上を揃えればなんとなく勝ちってことです。

しかし班長グループは、次々と良い出目ばかりを出していく。カイジ圧倒的敗北。更に多額の借金を抱えることになる。しかし、1ヶ月後、三好というキャラに班長が出した出目を記録したメモを見て、何かに気付くカイジ。

「いい目を出す時はたいてい一投目、そして必ず連中が隣同士で連なってる時」「サイコロってのは立方体だから、どこから見ても…ああっ!まさかそんな!」
そう班長はバッチリとイカサマをしていた。その名も『シゴロ賽』。1・2・3の目がないサイコロを使用していた。4・5・6が二つずつあるサイコロだから、三度に一度は確実に勝てる目が出る計算。つまり、確率論で言えば「絶対負けない」サイコロ。圧倒的イカサマ。

そして再び班長とのチンコロ勝負。班長が親になった時に、組んだグループ全員で50万円以上を張り勝負に出る。それを見た班長は、カイジに「シゴロ賽の存在がバレた」と思う。そこで敢えて仕掛けた。カイジがサイコロを押さえに来ると考え、普通のサイコロを振った。時代劇さながらの悪代官のような鋭い視線です。

しかし、何度試してみても取り押さえに来ないカイジ。それを見て班長は考えを翻す。「カイジは気付いてない」。そしてシゴロ賽を振ってしまう班長。

「キタ!」。サイコロが回ってる最中に、カイジが取り押さえに行く。そして、班長のイカサマが明るみになる。この瞬間が気持ちよすぎるw

何故、カイジが最初サイコロを取り押さえに行かなかったか。その理由は簡単。班長がずっと「カイジを睨みつけていた」から。アホです班長。そして、本物のシゴロ賽を振ったコマでは、ずっと茶碗の中を見つめてます。
班長はグズる。「サイコロは回ってる最中だから俺は振ってない」どうこう。ただカイジは「勝負続行で手を打とう」と持ちかける。しかも、班長の「前もって用意した特殊賽の使用も許可」したままで。案の定、快諾する班長。
しかし、それがイケなかった!
カイジはなんと全部「一の目」のサイコロを振った。なんと5倍の役!(よく分からない人は二枚目の画像の表を見てください)しかも班長は『親』だから逃げることは許されない。えげつなすぎるカイジ。結果、大金をゲットし、仲間も含めた外出できる権利をカイジたちは手に入れる。

パチンコ『人食い沼』(5~13巻)
しかし、仲間の三好たちは自分たちは金を受け取らず、全てをカイジ一人の肩に託した。ギャンブルで大金を得て、自分たちの借金も返済し、地下労働から解放してもらえるように。ただし期間は数週間のみで、軍資金もたった80万円。6人全員の借金6000万円までは程遠かった。ちなみに、この三好は次のシリーズで裏切りますw

手詰まり状態のカイジだったが、坂崎というオッサンに声をかけられ「一玉4000円」のパチンコ台を見つける。それが通称『人食い沼』。(画像はイメージ図です)

しかし、このパチンコ台で勝利できたのが、たった二人。それが帝愛グループ総裁の兵藤と、カイジが前シリーズで倒した利根川だけ。つまり、このカジノは帝愛グループが元締めを務めていた。どこまでも因果がつきまとうカイジ。

それはつまり、「誰も勝つことが出来ない」パチンコ台ということを意味していた。ただ、勝てば足元にある大量の玉を全部手に入れることができ、その額がナント7億円!
ただ、それはそのパチンコ玉は数だけ、挑戦者たちが苦渋を飲んできた過去という証に他ならなかった。「そのパチンコ玉一つ一つが悔恨・怨嗟の涙、その結晶。命の灯なのだ」by坂崎。

たった80万円ぽっちしか持っていなかったカイジには、これに勝つしか道が残されていなかった。
人食い沼の難攻不落の罠の数々
『人食い沼』に用意された、その難攻不落の罠の数々を紹介していきます。
まず一つ目の関門。『狭い釘の道』。真ん中のルートにある釘と釘の間隔が狭く設定されてあり、パチンコ玉が通らないような仕組み。
そこでカイジたちはゲージ玉(玉の通りを確認する道具)を細工。普通のパチンコ玉が簡単に通るように、ゲージ玉そのものを大きいものに作り替えた。

↓こんな感じで、最早忍者。

二つ目の関門も、かなり卑劣。玉が通過するとセンサーが反応し、その下にある『カパカパが自動的に閉まる』。全てのパチンコ玉を弾いてしまい、一切通らなくなってしまう。実際ここまで露骨だと笑えてきます。

横から通そうにも、普段であればクルクル回る風車もガチガチに固められていた。ただ何度も打ち続けてる内に、カパカパが破壊。もはやガバガバ状態。カパカパがガバガバ!!

正確にはカパカパを動かす左右の棒が、ヘニャっと折れる。これもカイジが細工していた。このカパカパが動く度に、その支えてる棒の中でトゲトゲのボールが動き、袋に入れ仕込んだ鉄が露出。そしてそれが酸化することで自然と熱が発生するようにした。説明が下手なので、分からなかったら漫画見てください。
とは言っても、たかだか知れてる熱量。更に確実にやわい熱でも溶けるように、そのカパカパを飴で使う材料で作った。それを設置するために、直前に坂崎に台を破壊させておいた。そして、それを交換させる会社に手心を加えるなどしていた。
最大の難関『三段クルーン』
そして、最大の難関は『三段クルーン』。野球選手じゃありません。

一段目二段目は、普通の作り。当たりの穴にパチンコ玉が入れば、下の段に落ちていくという仕組み。ただ三段目が問題。奥にある当たりの穴の上の方にコブが作ってあり、上からポトンと簡単には入らない仕組みなっている。

前の方向から穴に入れるしか道はないが、これも無理。三段クルーン自体に傾きが作ってあり、下方向から行こうとしても穴に辿り着く前にパチンコ玉の勢いが殺される計算。
しかも、三段クルーンだけではなく台自体、床すらも傾きを作られていた。圧倒的用意周到。支配人の一条は「落ち葉が滝を逆に登ったりはしない!」と余裕しゃくしゃく。とにかく、それぐらいに鬼畜設定。

しかし、その一条の絶対的安心とは反して、当たり穴に目掛けて次々とかけ登っていくパチンコ玉。本来であれば、手前に傾きが作ってあるから物理的にありえない。

それで、カイジは何をしたか。なんとビル全体を傾けた。

周辺の地盤は弱く、周辺のビルで地盤沈下の対策工事をやっていたことをヒントにした。そして、1トンの水が入るビニール水槽を20個(合計20トン)をビルの片側だけに敷き詰めた。仕掛けが壮大過ぎて笑います。

支配人は苦し紛れに、更にクルーンを奥に倒す。これが功を奏した。ことごとく二段目でパチンコ玉が霧散した。三段目にすら入らなかった。それもそのはず、あまりの急な傾斜でパチンコ玉の慣性の登る力が削がれ、ハズレ穴に入るしかなかった。
「人食い沼」陥落!塞いだ!死に至る道を!
…かに見えた。
しかし、カイジは不敵な笑み。「一条ビックリするぜ!二重の奥傾斜がもたらしたもう一つの現象!そいつを目の当たりにしたら!」。しばらくすると、衝撃の光景が。なんとクルーンに複数のパチンコ玉があふれていた。

一条があまりに奥に傾けすぎたため、パチンコ玉を排出する穴が詰まっていた。

ハズレ穴に入ったパチンコ玉が、あとはどんどん溜まっていく一方。クルーンはもはやパチンコ玉の巣窟と化す。しかし、一条も死んではいない。最終手段も最終手段。一発逆転の策を取る。ナント穴の周囲に強力な風を発射する噴射口!

まさに悪魔的なイカサマ『風のバリア』!パチンコ玉が当たり穴に一切近づけない!ここまで露骨なことをされると、もはや笑うしかありません。

しかし!しかし!カイジも圧倒的な物量攻撃で対抗!
一条も思わず「膨大すぎる!あまりに敵が!」と、うぐぐ。最早なすすべがない一条。そしてカイジ「人食い沼」を圧殺!チャンチャン。
賭博破戒録カイジの名言集
『1巻』
イカサマ班長が堕落しきったカイジを見てつぶやく。
「明日頑張ろうという発想がダメ」
「明日から頑張るんじゃなく、今日だけ頑張るんだ!」
「今日を頑張った者のみに明日が来るんだよ」
思わず「深イイ」とボタンを押しそうになった。こんな名セリフを吐く奴がなんで地下労働をさせられてるんでしょうか。
『2巻』
「三度勝てば顔は紅潮し体温が上がるぐらいの『張り』」
「逆に三度負けたら血は逆流、胃まで痛んでくる『張り』」
「それが博打の基本だ!」
「そんな張りを続けてこそ、ほの見える分岐点!」
「ひりつかなきゃダメっ!」

まさにギャンブラーの鑑です。
『6巻』
坂崎が『人食い沼』にボカスカやられまくって、次々と大金を注ぎ込み出す。もはやただの半狂乱状態。その時に出た言葉が「ある意味、桃源郷!」。

ギャンブルにのめり込む人も、まさにこんな感じで「負けることに快感」を抱いてるんでしょうね。恐ろしいです。
『11巻』
もうパチンコにつぎ込む金が尽きた時に、遠藤に大金をお願いするカイジ。でも遠藤は、首を縦に振らない。そこで出たカイジのセリフ。
「分かってくれよ!望みに進むのが気持ちのいい人生ってもんだろ!」

『13巻』
ラスト遠藤に借りたお金すら尽きて「もうカイジが敗北!?」って時に、坂崎が盗んできた横領金を差し出す。それを受け取り、カイジが言ったセリフ。
「返せば問題ない!ガタガタ御託を言ってる時か!」
「勝てば正しくなるんだ!」
最初の頃、坂崎の横領にウダウダ文句を言ってたのが懐かしい。
賭博破戒録カイジの総合評価
誰かが死ぬとかはないので、前シリーズと比較しても読みやすいんではないでしょうか。パチンコという「入る入らない」という誰にでも視覚的に分かるシンプルな勝負なので、見てて頭を使わないので面白い。ビルごとを傾かせるといった発想も壮大でGood。
地下チンコロにしてもルールも複雑ではなく、やはりこれも視覚的なトリックで納得しやすく分かりやすい。サイコロに細工がしてあっただなんて、まさに盲点も盲点。麻雀といった既存のルールが複雑なギャンブルではないので、誰にでも取っ付きやすい内容のはず。
カイジシリーズの中では、個人的に一番面白かったと思います。ただやはりこれもアニメの方が面白かったので、80点台に留めておきます。