走馬灯株式会社 / 第3巻 [菅原敬太] (画像あり)
- 09/09/2013 00:00

改めて簡単に説明しておくと、これまでの自分や知ってる他人の過去をそのまま映像として見せてくれる会社が突然自分の目の前に現れる。それが『走馬灯株式会社』。例えばそこで自分の妻の映像を見て不倫や過去の犯罪を知って、サスペンス的な血生臭い展開が起きる漫画。
内容的には「読める」漫画で絵柄に拒絶反応さえ示さなければ面白いと思います。
笠木修道、長澤比佐志(3巻)
笠木修道は有能な画家だが、盲目。
『天剛山』という山の風景を描いたシリーズが有名。
ただ昔そこの山登りをしている最中に、足を滑らせ崖から転落。
その時の衝撃で視力が失われてしまった。
長澤比佐志は幼なじみの親友。しがない美術教室を経営。
笠木は再び天剛山に登りたいと言ったので、二人で登る。
その山中に、何故か『走馬灯株式会社』が。
笠木のディスクを二人で観ると、
まさに輝かしい人生そのものだった。
そして、滑落した場面までビデオが進む。
笠木は「視力を失った俺の代わりにお前に確認して欲しい!」
再生させる長澤。「どうだ何か映ってるか?」と尋ねる笠木。

「いや画面はボヤケてて何も映ってない」と語る長澤だったが、

映像には今にも突き落とそうとする自分の姿があった。
ただ笠木は「もう一度俺が崖から落ちるシーンを再生してくれ」と懇願。
少しうろたえる長澤だったが、断ると不自然なだけだと再生。
ただ笠木は気付く。「誰かいる…俺の足音以外にもう一つ…かすかだが」
そして何か「ピピッ」という音が鳴る。

「その男の腕時計のアラーム音だ!」と笠木。
「俺はこの音を聞いたことがある」
驚く長澤。
「長澤…良かったら今度はお前の人生を観せてくれ」
と笠木が言った瞬間、長澤が部屋を駆け出す。

外は猛吹雪だったため遭難してしまう長澤。
長澤のリアルタイム走馬灯をチェックしていた笠木はそこへ向かう。
「正直に答えてくれたら助けてやる」と笠木。長澤は白状。

そして、ずっと笠木の才能に嫉妬してたこと、
『天剛山』シリーズは一緒にやろうと約束してたらしく、
それを一人で描き上げた笠木をずっと恨んでいたことも。

8年後、それ以来ずっと会っていなかった二人が再会。
「一緒に天剛山シリーズを完成させよう…」
「お前は俺の目になってくれ、俺はお前の手になる」
そこそこ温かい貴重なオチ。
猪原厚三(3巻)
タクシー運転手の猪原厚三56歳。

妻にも娘にも逃げられ独り身の寂しいオッサン。
出ていこうとする妻を引き止められなかったことを、
今現在になっても強く後悔している。

ある日ガラの悪い客を乗せるも、何故か山の中でエンスト。
直るまでの間、客がどっかそこらへんをウロウロ。
ただ直っても全然帰ってこない客を心配し、
探しているとやはり『走馬灯株式会社』。
そこで既に客は自分の過去の映像を観ていた。

しかしオッサンがその客の走馬灯の映像を見ていると、
そこにはまさかその客にレイプされている、
ずっと会っていなかった自分の娘がいた。

そいつを警察に付き出そうとするも、暴れる客。
振り落とされそうになるオッサン。
しかし、「もう二度とこの手は離さん!」
標識にぶつけられたオッサンは、
そのままタクシーごと崖に落ちる。
そのガラの悪い客は徒歩のまま下山。
しかし、周りの通行人の視線が痛い。
明らかに自分を見ている感じ。
「まさか!?オッサンがまだ生きてて
俺に付いてきてるのか?」
と背後を見ると…

背中にはオッサンの手だけがあった。
走馬灯株式会社3巻の総括
笠木長澤の回では親友が突き落として殺そうとするいつもの血生臭い感じでしたが、オチ的には比較的救われる感じの温かさがあったかなと。表紙に出てくる妹尾舞も比較的温かいオチだった気がする。

他には権代忠重とかいう奴もいます。この男は金持ちで、妻と子供の3人暮らし。しかし走馬灯株式会社が現れて、それぞれが相手の過去を見てしまう。お互い不倫をしてることがバレたりで、お互いが殺し屋を雇って…という流れ。クズな人間たちがお互いの欲望剥き出して思惑が交錯して、結果的に全滅してしまうオチが「らしく」て良かった。
走馬灯株式会社3巻の評価
◯展開力…★★★★☆+
◯テンポ…★★★☆☆
◯キャラ…★★☆☆☆
◯作画力…★★☆☆☆
◆80点-
『走馬灯株式会社(3)』のAmazonレビュー