戦争は「悪」だ！歩行不能な兵法家・孫臏が戦場を駆け抜けるー『ビン -孫子異伝- (1)～(14)』

11/10/2013　09:55

歴史漫画戦争漫画アクション漫画

『ビン～孫子異伝～』の既刊レビュー。ジャンル的には、中国の歴史マンガ。コメントでも指摘されましたが、三国志ではありません（笑）

結論から言うと、面白い。孫子と呼ばれる孫ビンの話。似たような漫画でキングダムがありますがアッチがアクションだとすると、コチラはストーリー・中身重視の内容。

話は紀元前360年頃の『斉』という国の話で、兵法家の孫ビンが主人公。ウィキペディアを見ると読み方が「ソンピン」だったりしてますが、一応漫画の中の読み方のままでいきます。これが歩行不能。何故なら若いころ、ライバルのホウケンに無実の罪に陥れられ、ビンという「膝頭（ひざがしら）の骨」だけを取るという罰を食らったから。
（

1巻）
中国怖ッと思わずビビってしまったんですが、当然歩けるわけがなく画像のように簡易車イスで常に移動。だから名前にもその罰の名前が入ってる。現代風に言ってしまうと、「高橋執行猶予」のようなもんか。周りからそう自然発生的に呼ばれたのか、自分からそう呼んでと頼んだのが定着したのかは分からないようですが、かなり自虐的な名前。この漫画を読んでると後者っぽい感じもした。

（10巻）
これが単于（ぜんう）という敵と闘う。昔中学だか高校で習った名前で思わず懐かしさを感じたんですが、コイツが強烈にエグい。とにかく戦争が大好き、殺しが大好き。しかも強烈に強い。「敵・悪魔」というレッテル以外に何も貼ることができない。4巻だと斉の無能な将軍の首をはねて、その生首を掴んで自分の顔の目の前に持ってくる。そして何をするかと思いきや、思っきり「ゴミがー！」と叫んでそれを巨大な馬に踏み潰させる。さすがに引いたんですが、だからこそ、このキャラクターを見てて面白い。

コイツ相手にどうやって主人公の孫ビンが分析・策略だけで勝つか、というのが見所。1巻だと最初斉の国に呼ばれた時、新兵たちを統率してみろというムチャぶりをされる。その時に、孫ビンは何をしたか。お前のような罪人風情の命令なんて誰が聞くかよ（笑）的な、舐めきってる兵士の首を掻っ切る。

（1巻）
その時にババンと格言がタイミングよく挿入される。この場合は、「断固とした処罰が実行されなければ、軍隊・組織はものの役に立たない」という意味の言葉。こうやってちょいちょいストーリーの展開に合った孫子の格言が挿入されるので、その意味がすぐ理解できる。その奥深さに対して、ものすごく納得感も得られる。

ただこの場面は薄皮一枚だけで、実際には殺してない。何故なら、孫ビンは根はかなり優しい。このふざけた兵士たちに怒った理由が、こういう独断で命令を無視するアホがいるせいで無用に他の兵士が死ぬから。そしてまたカッコいい言葉を畳み掛ける。「軍師とは戦いに勝つためにいるのではない！彼ら兵士を待つ者の元へ生きて帰すためにいるのだ！」。震える。

（9巻）
ただ優しすぎるが故に、また兵法家として有能が故に、自分のことを真実の大量虐殺者であると思い悩む。普段から常に考えてることは「いかに効率的に人を殺すか」。それのみ。仲間のシンフェンが斉の国の人々を守ってくれていると擁護してくれるんですが、画像のセリフにある通りに結局は誰かを殺してることに変わりはない。

そういう良心の呵責から、歩けないにも関わらず自ら戦場で先頭を切るという「自分の命を的に晒す」という独特の戦闘スタイルにも繋がってる。その姿が心底カッコよいし、そのギャップも面白いし心が惹かれる。

（11巻）
一貫してこの漫画の根底にあるのは「戦争は悪」ということ。戦争を起こす者もその戦争を受ける者も、どちらも悪。どちらにも正義はない。戦わずして相手の軍事力を屈服させるのが最善という格言もあったり、冷徹非情な軍事専門家の孫子が語るからこその強烈な説得力がある。

間者（スパイ）同士の攻防も見もので面白い。敵側にいた中ボスだと思ってた奴が実は仲間だったり…という騙し合いの展開もありつつ、キングダムのようなアクション要素もたまにありつつ、結構楽しめる漫画。軍事関係の漫画はどうしてもセリフも多くなりがちですが、これに限ってはそれがなくテンポ感を持って読みやすい。

三国志がテーマの漫画や小説はどうしても好き嫌いがハッキリ分かれがちですが、全く興味がない読者でもその3・4割ぐらいはググっと一気に興味が持ってしまうような漫画かな。ストーリーも「敵を倒す」という単純なものではないので読み応えはあると思います。

【このマンガの個人的採点】
◯展開力－★★★★☆+
◯テンポ－★★★★☆
◯キャラ－★★★★☆
◯作画力－★★★★☆
◯点数－85点!!

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カテゴリ:グランドジャンプ

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初めまして

ブログ楽しく読ませてもらってます

私も沢山の漫画を読んでいる自負があったのですが、読んだことのない作品もなかなか紹介されていて
独自の見解も興味深いものがあります

ところでキングダムのレビューの時も思ったのですが、どっちも三国志とは別の話になりますよ
中国史は結構いろんな時代に別れていて、殷周伝説（商）、封神演義（商）
春秋時代、戦国時代、項羽と劉邦（漢）、三国志、水滸伝、等といった具合に様々です

もしまだ読まれた事がないのなら、蒼天航路（三国志）と横山光輝さんの作品をおすすめします

2014/01/16(11:55)
ラオウ URL
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Re: 初めまして

ご指摘ありがとうございます(*´∀｀*)
なにぶん「歴史」に疎くてすいませんm(_ _)m
中国の歴史モノは全部三国志とすら思ってました(^_^;)

歴史マンガも積極的に手を出してたジャンルでもなかったので、
フワッと誤魔化しつつレビューしちゃってました(；´∀｀)
自分でも気付いてるんですが、なかなか勉強する機会もなく…って感じで。

わざわざ作品などを教えていただき感謝です。
中国の歴史モノは人気なジャンルでもあるので、
これから地道に少しずつでも覚えていきたいと思います(｀；ω；´)

2014/01/16(22:42)
ドルジ露瓶尊 URL
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すごないマンガがすごい！