四月は君の嘘 感想| 「音」を失くした天才ピアノ少年が見つけた『音』
- 04/24/2014 07:53
『四月は君の嘘』の1巻から8巻までのレビュー。月刊少年マガジンで連載中の音楽マンガ。
最新9巻が5月16日
に発売されるので記事化。
音楽マンガということで、ピアノやヴァイオリンなどの演奏描写が登場。ただ、そういう描写は「紙の上」で表現するのがかなり難しい。何故なら、『見えないモノ』を目に見えるカタチとして表現しなければいけないから。
ただこの『四月は君の嘘』というマンガの場合、その描写が秀逸。
(2巻)
全体的に躍動感みたいなもんがある。
(4巻)
会場全体の聴衆・観客が「ハッ」と息を飲み込む。演奏以外を描写することで、演奏のスゴさが遠回しに、でも確実に伝わってくる。
主人公は心の闇を若干抱えてる。英才教育バリバリだった母親の影響を受けてて、自分の演奏したいように演奏ができない。ただある時を境に吹っ切れて、自分が演奏したいように演奏する。その時の描写が…
(5巻)
主人公を黒い影として描くも、その背景には後光を描く。そのことで『反転』という意図・演出が明白に伝わってくる。
全体的に『音楽の躍動感』が伝わってくる描写でありつつも、そこには「派手さ」がないのが却ってスゴい。どうしても普通、こういう音楽をテーマにしたマンガは、キャラの周りに音符(♪)を描きがち。もちろんそれはそれで全然アリな手法だと思いますが、このマンガはそれが一切ない。
それにも関わらず、定番の音楽マンガよりも「音楽」という価値観が伝わってくる。コマ割り・構図・セリフの質や位置、そういうのもろもろ、下手な小細工を使ってこない不遜さが、作者の実力の高さを伺わせる。
主人公の有馬公生は、とにかく闇を抱えてる。
幼い頃から母親からずっとピアノの英才教育を受けてた。でもその母親は、ずっと病気がち。ある意味現実逃避するかのように、有馬公生に全部自分の力を注いでた。
(1巻)
有馬公生は有馬公生で、母親に元気になってもらうため「だけ」にピアノを頑張ってた。
ただ母親は「譜面通りに演奏」することだけを求めてて、一方、有馬公生は「母親が喜ぶ演奏」をしたかった。そのズレから、親子ゲンカに発展して、つい有馬公生は「お前なんか死んじゃえばいいんだ」とにらみ返す。
そして翌日、容体が急変した母親は死亡。その時のトラウマが14歳の現在まで残ってる。
(5巻)
ピアノを演奏しようとすると母親が現れて、聴覚を奪う。日常生活では問題ないものの、結果的にピアノの演奏できなくなってしまう。
(2巻)
ただ宮園かをりという天真爛漫な、ヴァイオリニストと出会うことで、徐々に変化していく有馬公生。
最終的に「君のために弾こう」という、ピアノ伴奏の新たな目的を見出す。これまでは病弱な母親のためという理由…というよりほぼ呪縛だけでしたが、その闇から救い出してくれたみたいな展開。
設定はネガティブチックなんですが、展開はポジティブで明るくなれる。「音楽」という過程を通すことで、清廉さや健全さが付加価値として追加されてる印象。宮園は宮園で病弱だったりもして、なんとも言えませんが。
(5巻)
青春要素も満載。「とりあえず走っとけ」みたいなノリは嫌いじゃない。音楽だけじゃなくて、少年少女たちの『成長ストーリー』も楽しめたりする。むしろ後半はそういう部分がメインに変わっていくのかも知れない。
全体的にクオリティーが高いマンガ。ストーリーだけではなく、画力も相当高い。線の描き方が上手いのは当然で、表情一つにしてもキャラクターの感情が手に取るように分かる。
演奏描写はコマ割りやセリフのみで王道的に魅せてくれつつ、その時の演出は一方で華やかだったりもする。影があるキャラクターが主人公だからか、演奏一つ一つに『ドラマ性』もあったりする。2巻でヒロインの宮園が有馬に放った「主役を食おうとするするんじゃないわよ」というセリフも結構好き。
全体を通して、欠点を探すのが難しいマンガ。絵柄を含めて、特に女性なんかが好きそうなマンガ。

◆Amazon.co.jp: 四月は君の嘘 (月刊マガジンコミックス)
◯90点!!!!
◯展開★5◯テンポ★4.5
◯キャラ★4◯画力★4.5
最新9巻が5月16日
秀逸な演奏・伴奏描写
音楽マンガということで、ピアノやヴァイオリンなどの演奏描写が登場。ただ、そういう描写は「紙の上」で表現するのがかなり難しい。何故なら、『見えないモノ』を目に見えるカタチとして表現しなければいけないから。
ただこの『四月は君の嘘』というマンガの場合、その描写が秀逸。

全体的に躍動感みたいなもんがある。

会場全体の聴衆・観客が「ハッ」と息を飲み込む。演奏以外を描写することで、演奏のスゴさが遠回しに、でも確実に伝わってくる。
主人公は心の闇を若干抱えてる。英才教育バリバリだった母親の影響を受けてて、自分の演奏したいように演奏ができない。ただある時を境に吹っ切れて、自分が演奏したいように演奏する。その時の描写が…

主人公を黒い影として描くも、その背景には後光を描く。そのことで『反転』という意図・演出が明白に伝わってくる。
全体的に『音楽の躍動感』が伝わってくる描写でありつつも、そこには「派手さ」がないのが却ってスゴい。どうしても普通、こういう音楽をテーマにしたマンガは、キャラの周りに音符(♪)を描きがち。もちろんそれはそれで全然アリな手法だと思いますが、このマンガはそれが一切ない。
それにも関わらず、定番の音楽マンガよりも「音楽」という価値観が伝わってくる。コマ割り・構図・セリフの質や位置、そういうのもろもろ、下手な小細工を使ってこない不遜さが、作者の実力の高さを伺わせる。
闇を抱えた主人公・有馬公生
主人公の有馬公生は、とにかく闇を抱えてる。
幼い頃から母親からずっとピアノの英才教育を受けてた。でもその母親は、ずっと病気がち。ある意味現実逃避するかのように、有馬公生に全部自分の力を注いでた。

有馬公生は有馬公生で、母親に元気になってもらうため「だけ」にピアノを頑張ってた。
ただ母親は「譜面通りに演奏」することだけを求めてて、一方、有馬公生は「母親が喜ぶ演奏」をしたかった。そのズレから、親子ゲンカに発展して、つい有馬公生は「お前なんか死んじゃえばいいんだ」とにらみ返す。
そして翌日、容体が急変した母親は死亡。その時のトラウマが14歳の現在まで残ってる。

ピアノを演奏しようとすると母親が現れて、聴覚を奪う。日常生活では問題ないものの、結果的にピアノの演奏できなくなってしまう。
ポジティブになれるストーリー

ただ宮園かをりという天真爛漫な、ヴァイオリニストと出会うことで、徐々に変化していく有馬公生。
最終的に「君のために弾こう」という、ピアノ伴奏の新たな目的を見出す。これまでは病弱な母親のためという理由…というよりほぼ呪縛だけでしたが、その闇から救い出してくれたみたいな展開。
設定はネガティブチックなんですが、展開はポジティブで明るくなれる。「音楽」という過程を通すことで、清廉さや健全さが付加価値として追加されてる印象。宮園は宮園で病弱だったりもして、なんとも言えませんが。

青春要素も満載。「とりあえず走っとけ」みたいなノリは嫌いじゃない。音楽だけじゃなくて、少年少女たちの『成長ストーリー』も楽しめたりする。むしろ後半はそういう部分がメインに変わっていくのかも知れない。
四月は君の嘘の総合評価
全体的にクオリティーが高いマンガ。ストーリーだけではなく、画力も相当高い。線の描き方が上手いのは当然で、表情一つにしてもキャラクターの感情が手に取るように分かる。
演奏描写はコマ割りやセリフのみで王道的に魅せてくれつつ、その時の演出は一方で華やかだったりもする。影があるキャラクターが主人公だからか、演奏一つ一つに『ドラマ性』もあったりする。2巻でヒロインの宮園が有馬に放った「主役を食おうとするするんじゃないわよ」というセリフも結構好き。
全体を通して、欠点を探すのが難しいマンガ。絵柄を含めて、特に女性なんかが好きそうなマンガ。

◆Amazon.co.jp: 四月は君の嘘 (月刊マガジンコミックス)
◯90点!!!!
◯展開★5◯テンポ★4.5
◯キャラ★4◯画力★4.5