こち亀が飽きられない秘訣と秋本治にスランプがない理由【漫画作成】
- 06/20/2014 08:00
こちら葛飾区亀有公園前派出所こと「こち亀」と言えば、少年ジャンプで連載されてる長寿漫画。今回はその長期連載を続けられてる秘訣などを勝手に考察してみたいと思う。
ちなみに2016年9月現在、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』は200巻で完結してしまっていますが、あくまで2014年に書いた記事ですのでご了承を。
先に結論から書いてしまうと『難しいことをしない』『最新ネタを扱う』『ベタから逃げない』ことが挙げられる。
とにかく話の1ページ目…もっと言えば1コマ目の書き出しが絶妙に上手い
(188巻)
漫画に関する話だったら、1コマ目に大量な漫画をバーンと持ってくる。
(188巻)
クリスマスに関する話だったら、1コマ目にでっかいクリスマスツリーをバーンと持ってくる。
画とセリフもマッチしてて、「これから何が始まるか」が非常に分かりやすい。先の展開が分かることで、もし興味が持てば読者としてはフラッと読みやすくなる。
ダメなマンガは数ページ読まないと、先の展開が掴めない。つまり「読者が読んでくれる」という前提で描かれてるんですが、ただダメなマンガほどそういう前提は成立しない。
一見当たり前の話なんですが、こういうシンプルなことをできてない漫画も多い。それだけ実は「ひと目で伝える」ことは難しい。
(187巻)
また時には先にタイトルをバーンと見せて、そこから話に入っていくこともある。これはこれで分かりやすい。タイトルもシンプルかつ的確。「進化した監視カメラに両津が追い詰められる絵」が容易に想像できて、その後のドタバタコメディーを思わず期待してしまう。
実は、昔より最近の方がこれを実行できてる。昔は1コマ目には、まず「交番」の絵が来ることが多かった。おそらく今週のテーマを伝えるより、まず「ここからこち亀が始まりまっせ!」というアピールを優先させてたのかも知れないが、やはり現在のこち亀の方が進化してると言える。
最初の書き出しでテーマがしっかり伝わるだけではなく、そのテーマに沿ったストーリーを展開させる。だから、ものすごく読み進めやすい。他のマンガでは、オチになってやっと何のストーリーだったか分かるマンガもあるぐらい。
また『起承転結』の完成度がハンパなく高い。1ページ目で『起』、3~6ページ目以降に『承』、10何ページ目ぐらいから『転』、そしてラストで『結』をシンプルにまとめる。このオチに辿り着くまでのテンポ感・安定感がまさに神ワザの類い。
また秋本治という作者は、それだけ『漫画家としての基礎』がシッカリしすぎてるぐらいシッカリしてる。オチに持っていくまでのスタイルが、とにかく完成され尽くしてる。
そして、「最新の小ネタ」。まとめブログなどと同じで、常に新鮮なネタを取り上げる。秋本治はおそらく還暦を超えてるはずだが、ボーカロイドとかが普通に登場する。アンテナの感度がビンビン丸。それが様々な世代にも読まれる秘訣。
ただ、それは扱ってるネタが違うだけで、基本的に描いてることは同じ。悪く言えば、「究極のマンネリ」「壮絶なワンパターン」とも言える。結果、Amazonのレビューが荒れてしまう一因だったりもする。
普通そこで作者自身すらマンネリを感じて、色々と小細工をしがち。でも、ベタや定番から逃げるとダメ。
週刊誌漫画のページ数は20枚程度と限られてる。だから、その中で表現できることも同時に限られてくる。つまり新しいことをしようと思っても、実は困難。極端なことを言えば、新しいことなんてしなくていい。こち亀に負けない長期連載マンガの「ゴルゴ13」だって、新しいことはしてない。
料理だって同じ。やっぱり好んで食べられるのは、ベタな定番料理。下手な創作料理なんてイラナイ。「腕のある」料理人が「新鮮なネタ」を使って、あらゆるジャンルの「定番の」料理を作ってたら、そりゃそんなお店は繁盛する。
また作者の立場に立てば、ジャンルを絞らず最新情報を集めることで、ネタ探しにも苦労しない。そのネタをベースに話を広げていけばいいだけだから、これが結果的に「秋本治にスランプがない」理由だと考察することも可能。また作者自身がンネリを感じることも少なくなって、モチベーションも維持できる秘訣ではなかろうか。
新しいことはしてないんだけど、ネタそのものは常に新鮮。そしてベタを恐れず、難しいことをしない。それが『こち亀』なんだと思う。
以下は余談。
この見出しでは10年20年以上前に取り上げられたネタを掲載。自動車やパソコン然り、時代の流れがハンパない。でもオッサン読者からすると、それが却って「懐かしさ」という感情も芽生えさせてくれる。
(セブン-イレブン・80巻)
昔で言えば、バーコードファイターとか。昔友達が持ってて、少しうらやましかった記憶。
50巻前後だと、やっと24時間営業のコンビニが普及しはじめた時代。
(セブン-イレブン・51巻)
両さん的には、じゃあ24時間駄菓子屋や24時間魚屋が流行るんじゃねーか?とツッコミ。発想は平凡だが、一般人でも思いつくようなボケで分かりやすい。ここで狙いすぎると、ちょっと外すことも多い。
特にパソコンなど電子機器関係が顕著。現在がどれだけ進歩してるか一目瞭然。ちょっと切なくなる。
(セブン-イレブン・101巻)
ディスプレイ分厚っ!明らかにブラウン管。これめっちゃ重くて、平気で10kgぐらいしやがる。101巻に掲載されてる話だから、そんなに古くないはずなんですが、それでもパソコンの進化がえげつない。
(73巻)
軽自動車も3ドアの時代。車種はスズキのアルトワークスか何かかな。ただ現在の軽自動車も車重が重くなってるので、こんな風に持ち上げるのは不可能だろう。ダイハツ・タントやホンダ・N-BOXは余裕で1トン近くしますからね(笑)
また、こち亀の単行本のラストには、ほぼ必ず有名人が推薦文を残してくれる。
(74巻)
例えば、アルフィーの坂崎なども推薦文を書いてる。グラサンを掛けてないのが、いかにも時代の古さを物語ってる。
ただ当時は人気でも今になって読み返すと、「誰やねん!?」という人も多い。
(72巻)
尾崎亜美…一切聞いたことがない。というか、このオバサンのネーミングセンスよ。わんぱく質ってなんやねん(笑)
こういう読み方をしても、こち亀の単行本は楽しめるんじゃないでしょうか。
ちなみに2016年9月現在、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』は200巻で完結してしまっていますが、あくまで2014年に書いた記事ですのでご了承を。
先に結論から書いてしまうと『難しいことをしない』『最新ネタを扱う』『ベタから逃げない』ことが挙げられる。
「つかみ」がバツグン
とにかく話の1ページ目…もっと言えば1コマ目の書き出しが絶妙に上手い

漫画に関する話だったら、1コマ目に大量な漫画をバーンと持ってくる。

クリスマスに関する話だったら、1コマ目にでっかいクリスマスツリーをバーンと持ってくる。
画とセリフもマッチしてて、「これから何が始まるか」が非常に分かりやすい。先の展開が分かることで、もし興味が持てば読者としてはフラッと読みやすくなる。
ダメなマンガは数ページ読まないと、先の展開が掴めない。つまり「読者が読んでくれる」という前提で描かれてるんですが、ただダメなマンガほどそういう前提は成立しない。
一見当たり前の話なんですが、こういうシンプルなことをできてない漫画も多い。それだけ実は「ひと目で伝える」ことは難しい。

また時には先にタイトルをバーンと見せて、そこから話に入っていくこともある。これはこれで分かりやすい。タイトルもシンプルかつ的確。「進化した監視カメラに両津が追い詰められる絵」が容易に想像できて、その後のドタバタコメディーを思わず期待してしまう。
実は、昔より最近の方がこれを実行できてる。昔は1コマ目には、まず「交番」の絵が来ることが多かった。おそらく今週のテーマを伝えるより、まず「ここからこち亀が始まりまっせ!」というアピールを優先させてたのかも知れないが、やはり現在のこち亀の方が進化してると言える。
起承転結の完成度
最初の書き出しでテーマがしっかり伝わるだけではなく、そのテーマに沿ったストーリーを展開させる。だから、ものすごく読み進めやすい。他のマンガでは、オチになってやっと何のストーリーだったか分かるマンガもあるぐらい。
また『起承転結』の完成度がハンパなく高い。1ページ目で『起』、3~6ページ目以降に『承』、10何ページ目ぐらいから『転』、そしてラストで『結』をシンプルにまとめる。このオチに辿り着くまでのテンポ感・安定感がまさに神ワザの類い。
また秋本治という作者は、それだけ『漫画家としての基礎』がシッカリしすぎてるぐらいシッカリしてる。オチに持っていくまでのスタイルが、とにかく完成され尽くしてる。
秋本治にスランプがない理由の根底はベタ
そして、「最新の小ネタ」。まとめブログなどと同じで、常に新鮮なネタを取り上げる。秋本治はおそらく還暦を超えてるはずだが、ボーカロイドとかが普通に登場する。アンテナの感度がビンビン丸。それが様々な世代にも読まれる秘訣。
ただ、それは扱ってるネタが違うだけで、基本的に描いてることは同じ。悪く言えば、「究極のマンネリ」「壮絶なワンパターン」とも言える。結果、Amazonのレビューが荒れてしまう一因だったりもする。
普通そこで作者自身すらマンネリを感じて、色々と小細工をしがち。でも、ベタや定番から逃げるとダメ。
週刊誌漫画のページ数は20枚程度と限られてる。だから、その中で表現できることも同時に限られてくる。つまり新しいことをしようと思っても、実は困難。極端なことを言えば、新しいことなんてしなくていい。こち亀に負けない長期連載マンガの「ゴルゴ13」だって、新しいことはしてない。
料理だって同じ。やっぱり好んで食べられるのは、ベタな定番料理。下手な創作料理なんてイラナイ。「腕のある」料理人が「新鮮なネタ」を使って、あらゆるジャンルの「定番の」料理を作ってたら、そりゃそんなお店は繁盛する。
また作者の立場に立てば、ジャンルを絞らず最新情報を集めることで、ネタ探しにも苦労しない。そのネタをベースに話を広げていけばいいだけだから、これが結果的に「秋本治にスランプがない」理由だと考察することも可能。また作者自身がンネリを感じることも少なくなって、モチベーションも維持できる秘訣ではなかろうか。
新しいことはしてないんだけど、ネタそのものは常に新鮮。そしてベタを恐れず、難しいことをしない。それが『こち亀』なんだと思う。
最新ネタもいつかは懐かしく?
以下は余談。
この見出しでは10年20年以上前に取り上げられたネタを掲載。自動車やパソコン然り、時代の流れがハンパない。でもオッサン読者からすると、それが却って「懐かしさ」という感情も芽生えさせてくれる。

昔で言えば、バーコードファイターとか。昔友達が持ってて、少しうらやましかった記憶。
50巻前後だと、やっと24時間営業のコンビニが普及しはじめた時代。

両さん的には、じゃあ24時間駄菓子屋や24時間魚屋が流行るんじゃねーか?とツッコミ。発想は平凡だが、一般人でも思いつくようなボケで分かりやすい。ここで狙いすぎると、ちょっと外すことも多い。
特にパソコンなど電子機器関係が顕著。現在がどれだけ進歩してるか一目瞭然。ちょっと切なくなる。

ディスプレイ分厚っ!明らかにブラウン管。これめっちゃ重くて、平気で10kgぐらいしやがる。101巻に掲載されてる話だから、そんなに古くないはずなんですが、それでもパソコンの進化がえげつない。

軽自動車も3ドアの時代。車種はスズキのアルトワークスか何かかな。ただ現在の軽自動車も車重が重くなってるので、こんな風に持ち上げるのは不可能だろう。ダイハツ・タントやホンダ・N-BOXは余裕で1トン近くしますからね(笑)
あとがき
また、こち亀の単行本のラストには、ほぼ必ず有名人が推薦文を残してくれる。

例えば、アルフィーの坂崎なども推薦文を書いてる。グラサンを掛けてないのが、いかにも時代の古さを物語ってる。
ただ当時は人気でも今になって読み返すと、「誰やねん!?」という人も多い。

尾崎亜美…一切聞いたことがない。というか、このオバサンのネーミングセンスよ。わんぱく質ってなんやねん(笑)
こういう読み方をしても、こち亀の単行本は楽しめるんじゃないでしょうか。